まずは、謹んでお悔やみ申し上げます。
今日の昼前にtwitterでこのことを知りました。
「沖縄・本部でダイビング事故 -スキューバダイビング.jp」

この記事内にも参照サイトの記載がありますが、元のソース記事は
沖縄でダイビングの女性が死亡 – MSN産経ニュース
ダイビング中におぼれ?神戸の女性死亡 沖縄・水納島:asahi.com(朝 日新聞社)
の2つ。

ダイビング状況に関してまとめると、

【日時】15日の昼過ぎ
【場所】沖縄県本部町沖7kmほど
【海況】海上は比較的穏やか
【ダイビングスタイル】ボートファンダイブ
【メンバー】インストラクター1名、ダイバー2名(62歳男性と48歳女性のご夫婦)、その他船長1名
【ダイバーの経験】3年前後(おそらくCライセンス保持者)
【事故時状況要約】ダイビング開始直後、事故者が1人で先にダイビングを始めて行方不明になり、約1時間後に付近を航行していたフェリーに発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。

他には一切の詳細不明です。

直接的に誰がが悪い何がどうだ等々申し述べるつもりは一切ないのですが、こういう事件があると、仕事柄どうしても自分に置き換えて考えてしまいます。
そして、どうやったら未然に事故を防げるか?
を考えることは必要だと思いますので、思うところを述べたいと思います。

まず前提として、これは体験ダイビングやCカードライセンス取得コース等の初心者のダイビングでは無く、Cカード保持者(明記は無いのですが、3年前後の経験者とあるのでそう考えることにします)をインストラクターが水中ガイドするスタイル、つまり「ファンダイブ」というダイビングだということになります。

そして、通常のボートファンダイブのエントリー(入水)後に多く実施されているのが「アンカー(錨)集合」という形です。
つまり、水底にかけられたアンカーがダイバーの集合地点であり、そこでグループの全員集合が水中ガイド役に確認された後、水中ツアーが始まる!というものです。
各自ダイバーは入水後、各バディ(常に一緒に行動するペア)単位で潜降ロープ沿いにアンカーまで潜降していき、アンカーの周りで待ち合わせするのです。
ダイバー全員のそばにインストラクターがついて、潜降・浮上テクニックをフォローしたり教えながら潜るのとは違います。講習では無いので。

以下、想定として担当のインストラクターが私、ショップが当店、ダイバーの方とは初面識ということとして考えてみたいと思います。

そもそもの段階でいうと、
うちで、ファンダイブをお受けする場合、ダイバーさんの情報として重要になってくるのは、
「年齢・経験年数・経験本数・カードランク・器材保有の有無」
あたりが上げられます。

年齢に関してはいうまでもなく、高齢なほど事故の可能性は高くなります。
器材保有に関しては、単純にダイビング専用器材への習熟度が測れます。
人間が水中活動するために必要不可欠なものですから習熟度は大変重要で、自分で保有されてる器材種類が少ないほど器材の操作に関して未熟といえます。

経験年数と本数とカードランクと器材保有の相関関係も重要で、
事故云々に関して極端に考えた場合、一番怖いのは、
(1)経験年数が長いにも関わらず、ダイブ数が少なく、OWDという初心者ランクで器材はフルレンタルの場合です。
同様に怖いのは、
(2)経験年数・本数ともに長く、器材も保有しているにも関わらず、OWDという初心者ランクのままというダイバーです。
一番安心(?)と思われるのは、
(3)経験年数・本数ともに十分で器材も保有されていて、経験に見合ったカードランクの方ということになります。

まず、(1)の方は、だいたいご本人自身が、ブランクや器材の取扱に不慣れなことによるストレスを感じながらお越しになるので、ルールを無視やインストラクターの指示を聞かなかったり、離れて勝手な行動をとる傾向にはないので、いつも以上にストレス対処や緊急事態への対処を心づもりしながら一緒に潜ることで対処できます。

問題は(2)で、全ての方がそうではありませんが、我流での経験が豊富なので、ルール無視や指示を聞き流されたり、水中で勝手な行動をとったりする傾向があり、個人的には一番注意を要するのが(2)です。

我々レジャーダイビング業界では、基本的には「自主規制」のルールのもとでダイビング活動しています。
そのルールを定めているのはPADI等のダイビング指導団体であり、その指導団体によって深度制限やランクに見合ったダイビングをすること、また適切なレベルアップ・経験の積み方等を指導しています。
その中には、初心者ランクのままであらゆるダイビングをしてもよい!というルール設定は無いし、指導されていないはず。
OWD等の初心者ランクのカードだけ取得して数百ダイブも経験しているという情報が入った瞬間、「このダイバーはごの業界のルールを守らない人なんだな!?」という第一印象を受けます。
そして、そういう我流経験者の殆どに観られる傾向として、バディー(2人ペア)システムに対する意識が決定的に欠けている傾向があります。

どこの指導団体もそうですが、バディシステム無しを前提としたライセンスコースは存在しません。
バディシステムが考慮されなくなった時点で、現代のライセンス指導カリキュラム自体が崩壊してしまう程、有り得ないことであり重要な事なんです。
これは初めてライセンスを取得する際に、徹底的に習うことです。

さて、
私どもでは、ボートダイビングに関して参加制限を設けています。
PADIという指導団体でいうところのAOW(アドバンス・オープン・ウォーター)ランク以上としています。

受付の際に、経験本数に関わらずOWDランクの方だった場合は、追加料金をいただきAOWのボートテーマ講習中という形をとって参加いただくことにしています。
逆にいえば、「何百本も経験してるから今更そんな講習は必要ないので受けない!」と意思表示された方に関しては、お店として受付をお断りしてます。

水中では、インストラクターとダイバーの方がマンツーマンというのは稀なので、だいたいグループ活動ということになるのですが、グループの中に「ルール無視」意識の強い方が含まれると、グループ全体の危険度が上がると考えています。
これも、事故の未然防止としてかなり有効だと思っています。
さらに、ダイバーの方自身も講習を受けるという意識でボートのダイビングをする訳ですので、そうでは無い方に比べると遥かに安全意識が高まることになり、同時に指導団体のルールにも則っているといえます。

私どものようなダイビングショップ・サービスでは、たいがいダイビング指導団体に属し、そのルールの上で活動を行ってます。
言い方を悪くすると、そういうルールを守る気が無いのなら、そもそも法律上必要とされていないCカードなんか取得しなければいいのにと思いますし、お店にはいかずに個人で勝手にすればいい!とも思います。
逆に、カードを取得し、そのライセンスカードを基にお店等で潜るのであれば、指導団体やお店のルール・指導は守る必要があり、当然だろうと思います。

と、いってもお店も色々あります。
実際、指導団体に属していながら、OWDのままで潜るのを推奨するかのように、「いいよ!いいよ!」「大丈夫!大丈夫!」と、簡単に深度制限を超えたり、ボート経験の無いダイバーを普通に連れていったりしているとこもたくさんあります。
バディシステムに対して軽視しているところもたくさんあるでしょう。
お店ということは、行き着くところ商売ですからね。
ダイバーから見たら、うるさく言われないし、お金も最小限で済むし「いい店だ」...と思ってもらえたらリピート客が増えて商売的にいいのでしょう...
でも、お店や業界にとって、同時にダイバー当人にとって、それでいいのか??

私と私のお店では、その辺を適当にしてまで商売繁盛したい!とは思わないし、逆にそうせざるを得なくなったとしたら、この商売を止めるときだな~と考えています。

だいぶ、脱線した感ありですが...

要は、お互いに、安全に関わる意識や準備、覚悟、ストーリーなど対処すべきことは、ダイバーを水に連れて行く前の段階で大半が決している気がするのです。
あとは、その場の海のコンディションや、ダイバーの様子を観察しながら、どれだけ臨機応変に対応し、或いは対応させていくかだと思います。

事故のあった方が、「1人で先にダイビングを始めて行方不明になり...」というのが気になります。
また、年齢も気になります。
そして62歳の高齢の方ではなく、48歳の方がお亡くなりに...

あくまで想像ですが、インストラクターが62歳の方にかかりっきりになって目を離したスキに、先に単独で潜りはじめたのでしょうか...
バディ意識が欠落していたのでしょうか...
このお二人のダイビングルールの熟知度は?それに合わせて補足し、されたか...
指示をしたのかしなかったのか...

聞いてみたいことは山ほど出てきますが、公開されている情報はごくわずか。
これだけでは全く何ともいえないですが、色々想像してみて対処法を考えてみることは出来ます。

こういう事故は起こってほしくないですからね...

久しぶりに、とんでもなく長文になってしまいました。
ダイビングをしたことが無い方にも意味が伝わるように考えながら書いてるうちに...
最後までご覧いただいた方、お疲れ様ですm( __ __ )m
ありがとうございました。

コメント一覧
  1. スキューバダイビング.jp より:

    はじめまして。
    当サイトの記事を引用していただき、ありがとうございます。
    全文、興味深く読ませていただきました。

    事故自体についてはもちろん詳細は分からないのですが、
    スパダイブさんの安全管理への意識に感銘を受けました。
    この記事をもとにここまで(長く)書かれるということは、
    常日頃から本当に意識を高く持たれているショップさんなんだなと強く感じました。

    初ボートに関しての線引きも、営利主義に走らずそうした基準を持つことが素晴らしいと思います。
    その気持ちをお伝えしたく、ついコメントさせていただきました。

    今後も何かとお役に立てれば何よりです。
    当サイトも信念をもってやっておりますので、(安全管理に対して)同じような考え方を持たれているショップさんもぜひ応援したいと思っています。

    以上、突然ながら失礼いたしました。

    • SDなかやま より:

      はじめまして。
      ダラダラ長文記事で恐縮です。
      最後までお読みいただき、コメントまでどうもありがとうございます。

      なにより、こんな記事に共感(?)いただける方がいらっしゃるということが素直に嬉しい限りです。
      いつまでもしっかり信念を持ち続けながらも、のんびり楽しくやっていけたらな~と思っております。

      今後もtwitterやブログ楽しみに拝見(たまに突如RT)させていただきますね。

      ありがとうございました。

  2. 神戸の田中 より:

    偶然、記事を見ましたのでコメントします。

    このダイビングで妻が天国に召されました。現在、海上保安庁の捜査が続いていますので書き込みできませんが、私たちは、40mまで潜れるライセンスをもち、3年で160本、ほとんどを宮古島で潜ってきました。

    この事故は、ガイドの安全確認と会社の安全管理に過失があったと私は考えています。

    一人で勝手にダイビングを始めたのでなく、ガイドの指示で私たちが先にエントリーしたのです。これ以上ここに書くことはできません。

    • SDなかやま より:

      ご当人様...
      お辛い中コメントありがとうございました。

      改めまして、お悔やみ申し上げます。

      若輩ながら私にも妻子があります。
      それを失うことを想像するだけで、とても恐ろしくなります。
      なんとお声かけしたらいいか...
      一日も早く捜査が終わって、色々な問題がよりよい形になり、1日も早く田中様ご自身の心が安まる日が訪れることをお祈り申し上げます。

      お二人共、ディープ・ダイビングのスペシャルティ認定を受け、一緒に160本ものダイビングを経験されてきたベテラン・バディーだったのですね。

      とても残念です...

      田中様も話せないとおっしゃっておられるように、事件の詳細を知ることは私には出来ないので、事件に対してのコメントは控えさせていただきます。

      ただ、どうやったら未然に事故を防ぐことが出来るか?という視点はいつも持ち続ける必要があると思います。
      そういう意味でフト思ったことなんですが...
      もしお二人がさらにレスキュー・ダイバー(RED)というステップのコース認定を受けておられたバディだとしたら、もしかしたら未然に防げたのではないか...などと。
      (もしそうなら恐縮です)

      世界中の色んなとこでダイビングすると、良く無いガイドに当たることもあるし、人間ですからミスすることもあると思います。
      ガイドのせいで一人の命が失われる!なんて悲しすぎます。
      物が壊れたとかなら文句行って賠償金貰えばなんとかなるかもしれませんが、失われた命は返ってきません。
      「自分とバディの身は自分とバディで守る」意識とスキルを持ち、「ガイドの間違った指示に対し何故?と言えるダイバー」に全員を育てることが出来れば...
      最悪のガイドに当たったとしても死ぬことはないのではないかと思ってしまいます。

      田中様には恐縮ですが、後半はこの場を借りて、今ダイビングを続けてる人達へのメッセージとさせていただきました。

      奥様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

      • 神戸の田中 より:

        ご返事ありがとうございます。

        身近な友人が今回のことでダイビングを止めるとおっしゃる方もいて
        何とか真相を知りたいと思っているのですが・・・。

        事故を未然に防ぐためレスキュースペシャリティーは必要なライセンスかも知れません。
        今更遅いですが、良きバディーになる必須ライセンスなのでしょう。

        これからダイバーを目指す方のためにも、ダイビングは続けたいと思っています。

        来週、沖縄に呼ばれていますので、帰ってきたらまた書き込みます。

        • oko より:

          現在、筑波大学社会人大学院で、高齢者のダイバーに関する研究を行っている62歳のダイバーです。
          高齢者の事故が増えているということで検索しているうちに此処にたどり着きました。

          DANの情報でも年齢・性以外の情報は少なく、死亡事故でも原因不明や単なる溺死が多く、事故の詳細はなかなか知ることが出来ませんが、事故者やそのご家族のお話を伺える機会があれば、安全なダイビングに繋がる情報を得ることができるかもしれないと考えています。
          もし可能であればインタビューなどもしてみたいと思っています。

          • 神戸の田中 より:

            筑波大学社会人大学院で高齢者ダイバーの研究を行っているダイバーの方へ

            インタビューに応じますのでどちらにご連絡すればよろしいでしょうか。
            筑波大学社会人大学院に連絡すればわかりますでしょうか。

            神戸の田中

          • SDなかやま より:

            神戸の田中さんへ

            こんにちは。コメントありがとうございました。
            私も何かお手伝いさせていただければと思い、筑波大学大学院の方へあたってみました。

            現在コメントいただいたokoさんを探してもらっています。
            特定いただいた後、連絡いただく手はずになっておりますので、ちょっと時間がかかるかもしれませんが今しばらくお待ちいただければと思います。

            あと、もしよろしければ「メール等にて」田中さんの連絡先等をお教えいただければ、筑波大学のokoさんから連絡が入った際にお伝えすることも出来ますが...
            差し支えなければご連絡くださいませ。

            まずはご一報まで

          • oko より:

            14日に大学より連絡をもらい、田中様とコンタクトが取れました。
            このブログにも何とか辿り着くことが出来ましたので、いろいろな情報を共有して、安全ダイビングにつなげることが出来ればいいと考えています。

            私の研究など拙いものに過ぎませんが、安全をみなさんで目指していきたいと思います。
            これからもよろしくお願い致します。

          • SDなかやま より:

            okoさんへ

            ご連絡ありがとうございます。
            そうですか。コンタクト取れましたか。
            このブログも微力ながらも何かのお役に立てたかと思うと幸いです。

            やはり色々な事を知ることが、よりよい今後を目指す上で不可欠な事だと思います。
            私どももこの一件を含め、もっと深く知りたいとは思うのですが中々詳細にたどり着くのは難しいです。

            色んなご研究について、拝見できるものならいつか是非拝見させてくださいませ。また、私どもでお役にたてることがございましたら!
            こちらこそよろしくお願いいたします。

            最後に、お辛い中、ブログへの書き込みを初め、前向きなご発言や行動をとられている田中さんへ敬意を表します。

        • SDなかやま より:

          まだ半年足らず...
          心の傷も癒えぬままおつらいことだろうとお察しいたします。
          今後いつの日か、okoさんのおっしゃるようなお話ができる日がくることがありましたら...私も伺ってみたい...そしてより安全なダイビングに繋げられたらと...。

  3. 非公開 より:

    管理者にのみ公開されます。

  4. 28 より:

    PADIが一番と思っている自体に
    安全要素が欠落しているのでは?
    何れにしてもOWDとして認定される
    と言うことはバディー潜水ができる
    と言うことでは?日本のダイバーは
    何時までたっても一人立ちできない
    のはダイビングショップがビジネス
    優先主義だからです。

コメントを残す

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事