3/14-15の2日間、大阪港湾合同庁舎内 大阪海上保安部7F会議室で開催された、
「救急再圧員」資格取得講習会
を受講参加してきました。
他に受講された方は21名(石川県や広島、神奈川等全国各地からお越しのようでした)。

「救急再圧員」資格取得講習会-受講参加

体験ダイビング程度の経験しかない人からしたら、
「なにそれ?」
だと思います。
ファイル sea20100315.jpg
スキューバダイビングのライセンスを持ってる人にとっては周知の事実(のハズ)なのですが、潜水するということは、水中という周囲の圧力(水圧)が高い環境で遊んだり仕事したりするということになります。

そういった高圧環境下で過ごすということは、人体のあらゆる器官に特有の作用がかかります。

ザックリひとまとめにして、潜水障害とか高気圧障害、潜水病などといわれるのですが、ダイバーはそういった障害の危険性と隣合わせであることを覚悟して潜水しているのです。

潜水障害があった時の有効な対処法として、人体を高気圧環境カプセルの中に入れ、必要な加圧をし(再圧)、長時間をかけて安全に減圧していくという処置があります。

こういった治療は専門医師にしかできませんが、専門医師がいない、もしくは直ぐには医師にかかれない場合の救急対処として、再圧装置などが有ればそれを操作出来る資格を持った人が操作を行えるようにし、少しでも救命の可能性を上げる、というのがこの資格の趣旨です。

2日間の講習内容です。

2日間の講習内容
・初日午前:関係法令のお勉強
・初日午後:高気圧障害の知識や対処法
・2日目午前:再圧室の操作方法のお勉強
・2日目午後:ポータブル再圧室の操作や蘇生法の実技、最後にテスト

全てを書いていくととんでもなく長くなるので、印象的なことと私の所感を以下に。

まず、高気圧障害についての問題を簡単に。

高気圧障害についての問題

上記の高気圧障害の一つ目の問題は、
「人間が水中では自然呼吸が出来ない」というわかりやすい問題とは違うことです。

『危険が目に見えず、問題が起こってしまうまで(或いは起こっても)体感出来ない』ことです。

人体はある程度の耐性を持っているようで、問題行動をとっても結果的には何も起こらない(起こったように感じない)ことも多く、それを繰り返しているうちに障害が発覚し、発覚して病院で検査を受けた頃には骨が腐っていたり...

高気圧障害に対する対処法について

この障害に対する100%完璧な対処法は、
『潜水しない/スキューバダイビングをしない』
しかありません。

そして
減圧症等は一度発症してしまうと、もう2度と元の体には戻れない!』
ようです。
(処置が良ければ、かなり元の状態に近づけることが出来るようになってきているようですが..)

と、いうような事は、
私達のようなダイビングのインストラクターでなくとも知識としてみんな習い知ってると思いますし、ググるとたくさんでてくると思います。

ファイル sea20100315-2.jpg
今回受けた講習では、初日午後から半日でしたが、潜水医学の第一人者として40年程も第一線で上記障害にあたってこられた東京医科歯科大学 教授の眞野喜洋先生にご講義いただきました。

スライド画像で具体的な症例や障害の結果、治療方法や治療結果等をたくさん交えながら、とても面白くお話しいただきました。

そして、正直ビビリました...

特に『30m潜ってしまったらもう潜ってない人の体とは違う云々..』とか、
骨の話で『減圧症を発症してしまったら、その後ダイビングを止めたとしても進行が続く云々..]などの話と画像。

ダイビングインストラクターで30m潜ってない人などいませんからね~

いや~、あの講義はダイビングをはじめて間もないうちに、是非みんな受けるべきだと思いますね~。

結論として印象に残った言葉は、だいぶ端折りますが、

ダイブコンピュータを守ってダイビングするのは安全潜水ではない!

ということです。
ちなみに、コンピュータを付けないで潜るのは論外です。

これも私自身よくする話ではあるのですが、現代のコンピュータは各人それぞれの体調や年齢、病歴等の個人の物理・生理データを読み取ってプログラムに反映させた物ではなく、あくまで標準モデルに深度と時間等を掛け合せた計算でしかありません。(何れ、そういう流動的なパラメータを反映できるようになるかもしれませんが)
長時間運転してきた、睡眠不足、高齢、二日酔い、等々...は、全て標準モデルより条件は悪くなります。

要するに、「ダイビングをしない」といのが一番の安全策ですが、
するからには

1)高気圧障害はいつでも起こりうるということを各自が認識
2)この障害は、肉体的訓練等で未然に防げる類いのものではないということ認識
(もちろん健康体である方が安全性は高まるが、「こういう肉体的トレーニングを積めば!」「こういうものを摂取しておけば!」間違いなく防げる、といった特効薬はない)
3)各自がコンピュータ等のモニター器材を「相応の安全率」を組み込んで活用し、正しく行動するしかない

ことを理解・納得しておく必要があります。
※間違っても「インストラクターについていけば絶対安心!」
的に命を他人に預けてはいけません。

インストラクターは、一緒に潜るダイバーの安全管理やコントロール方法を十分に学び、知識や経験の向上に勤め、楽しく無事に潜水を終えるために最善を尽しているはずで、時には不慮の事態等に対処するため、自分の身の危険を承知で追いかけたりすることもあります。

でも、他人の安全を100%保証することは出来ないのです。
同様にインストラクターも自分自身の安全を100%保障することは出来ないのだから。

といった前提を認識していれば、潜る人全員が十分な安全意識の中で活動出来る訳です。
グループに認識不足の人がいて、適当に勝手な行動をとられた場合、グループ全体の危険度は急上昇ということになります。
ということを書きたくなった初日講習でした。

本書は潜水医学にかかわる生理学的メカニズムを系統立てて解説するとともに、高気圧環境下の生体、特に呼吸器系・循環器系に及ぼす影響を分析し、安全な潜水システムを医学的立場から確立させる目的とともに、高圧生理学の基礎を解説した。日本でははじめての潜水医学の成書。一般ダイバーはもとより、スクーバダイビングのインストラクターにとって、潜水医学に関する正しい知識と理論的考察力を身につけるための専門書である。潜水医学、生理学を志す研究者にとっても読み応えのある内容である。

再圧室についての学習

ファイル sea20100315-3.jpg2日目は再圧室について学び、使ってみるということをやりました。

実際に器材を接続し、カプセル(再圧チャンバーという)に人が入り、エアタンクからチャンバーに空気を送り込んで加圧(深度20m相当まで)し、時間をかけて減圧するというのを体験出来ました。

これは、ほんとに貴重な体験でした。

印象的なことを並べてみます。

◎想像以上に空気(タンク)を使う・・室内を水深20m相当の気圧に上げるのを一度やるだけでタンクの半分は無くなる。(水深50m相当だと1本なくなる)
◎加圧・減圧速度は、実際のダイビングの際の潜降・浮上速度よりかなり低速にしていたにも関わらず、耳抜きが相当シビアになる(体感4倍?8倍?)
◎送気・排気等バルブ操作がかなりシビア
◎室内の換気や加圧速度、加圧時間、減圧速度等の最重要操作は全て手動で行う方法しか無く、一人で全てを安全にまかなうことは到底不可能。(最低4名以上必要)
◎これが1名用??(ゴツイ)

実際問題として、今回使用したポータブルチャンバーを保有している潜水業者は殆ど無い(レジャーダイビングでは特に)らしく、またあったとしても、そうそう簡単に使えるものではない。(少なくともそれは実感)
また、再圧室を保有する病院も全国で40ほどで専門医師も少ない。

ファイル sea20100315-4.jpg そんな中、エアエンボリズム以外の障害であれば、保安庁等の輸送手段を駆使して再圧施設の整った病院まで至急搬送する、というのが現時点ではベストの対応とのこと。
が、エアエンボリズムの場合は搬送に時間を食ってる間に駄目になるらしい。

いえることは、結局「潜水障害になどなってはいけない!」ということを再認識させられた2日間でした。

ダイビングする人は、潜る前に

『絶対に潜水障害にならない!させない!』という覚悟

をし、意識を持つことがまずなにより重要だと。

そして一度でも減圧症になってしまい、処置が遅かったら...
もう終わりです...元には戻りません...

治療の原理は?/適応疾患は?/気をつけるべき副作用は?治療装置の中に持ち込んではいけないものは?患者さんへの説明はどのように行うべき?etc…トラブルシューティングやQ&Aなど現場ですぐに役立つ情報も満載。HBOTを基本から理解し、安全な治療の実践に必ず役立つ1冊。
ここにご紹介の画像を含め、撮影した画像は下記フォトギャラリーページにまとめています。どうぞご覧ください。
2010年3月撮影海フォトギャラリー|南紀白浜スパダイブ

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